パン菓子工房ouiがつくるつながり〜応援メッセージ 山中礼二さん(みなさぽ)
2020/6/14 18:52
この3年間、パン菓子工房ouiは、「パンをつくること」を通して、いろんな人に支えられ、いろんなご縁をつないできました。
・この土地とのつながり
工房のある入谷からの里山のめぐみ。志津川湾からは、海のめぐみ。例えば、ワカメ、ひじき、タケノコ、トウモロコシ、リンゴ、ブルーベリーなど、パン生地に練りこんだり、季節のピザの具にしたり。イベント時には南三陸産のサバサンドや、惣内山の放牧豚でローストポークサンドもお届けしています。生産者さんが手塩にかけた畑や牧場や海から直送の食材をパンにできるのは贅沢なことで、それを、食べる方にお伝えできることはとても嬉しいこと。この小さな経済の循環を作る人も食べる人も楽しみながら続けています。
工房前の畑では、大家さんと工房・利用者と共同で自然農の麦を育てています。ここから取れる希少な粉は「ここぞ」という時のパンに使っています。
・サポートしてくださる方がたとのご縁
パン菓子工房ouiを始めるにあたり、多くの方々がご支援くださいました。東京での販売の際には今も足を運んでくださったり、取り寄せしてくださったり。パンを通じて、南三陸を思う温かい言葉もいただきます。
イベント出店に声かけくださる方や、工房のパンとコラボしてくださる方々も。とても全員を紹介しきれないのですが、例えば、写真は、工房立ち上げの初期からとてもお世話になっている「みなさぽ(南三陸さぽーたーず)」という、有志の復興支援グループが昨年夏工房を訪ねてきてくださった時のものです。
工房を作るはいいが、商品開発やクオリティチェックに協力してもらえるアドバイザーをどう探していいかわからない、と困っていたときに、「みなさぽ」さんがなんと、あの、世田谷パン祭り事務局につないでくださったのです。名だたるパン職人さんが集うメーリングリストで、パン菓子工房ouiのアドバイザーを募集してくださいました。そのご縁で出会えた、東京・調布のプロテアのオーナーシェフ(当時)にご指導いただけることになり、工房利用者たちのスキルアップをしてきました!
そしてなんと、パン菓子工房ouiの利用者たちも世田谷パン祭りの復興支援ブースで自分のパンを販売するという機会をいただけたのです。昨年の世田谷パン祭りでは、いずみパンの水野いずみさんと一緒にトークショーにも挑戦しました。こんな日が来るなんて、本当に夢のようでした。この経験が励みとなって日々の活動につながっています。
トークショーのモデレーターもしてくださった、「みなさぽ」リーダーの山中礼二さん(グロービス経営大学院教員/写真右から3人目)に応援メッセージをいただきました。山中さん、みなさん、本当にありがとうございます!
(栗林美知子)
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「南三陸にひとり移住してパン工房を開いている女性がいる」という噂を聞いたのが、ウィメンズアイとの出会いでした。そしてその工房から次々に、パン屋さんとして起業する人たちが生まれるのを見て、私は驚きました。起業家への投資、育成、インキュベーションに携わって20年。私が見てきた起業支援は男性目線、都会目線だったのかもしれません。
ウィメンズアイの皆さんが持つ「女性のまなざし」が、全国に届くことを願っています。
(山中礼二)
パン菓子工房oui〜応援メッセージ〜水野いずみさん(いずみぱん)
2020/6/13 19:31
パン菓子工房ouiのシェア利用を経て、気仙沼市で「いずみぱん」を創業した、水野いずみさんに応援メッセージをいただきました! 子どもたちの食を安全でおいしいものにしたいと願ういずみさんのパン、みんなに大人気です。いずみさん、応援ありがとうございます!
ウィメンズアイとの出会いが、私の転機となりました。前向きに歩いていく小さな一歩を大きく支えてくださり、今があります。
震災時には職場で被災、家と家族が犠牲になり、生活が一変しました。
復興に向かう中、社会で何らかの役に立ちたいという気持ちはあるものの、田舎には従来からありがちなジェンダー不平等に気づくこともなく動けませんでした。
女性が発言をすること自体、まだまだ年配の方々は特に是としない、これは男性側からだけでなく、女性側からもです。そういう社会構造で長年生活していると、きっとそれが問題だということすら理解出来ないで不自由を強いられているのが現状です。
このような男女間格差があるため、起業など何かを始めることは、物心共に障害が大きくなります。
WEは従来からある田舎に特有の問題を、地域の中に根ざしながらも温かく気づきまで導いてくれる灯台のような存在です。
女性だけでなく男性も心地よい空間を作り出すことが出来ており、エンパワーした女性もまた、しなやかな強さを持つことが出来ていると感じます。
私はおかげさまで、シェア工房であるパン・菓子工房ouiを利用し、昨年秋に自身の工房を気仙沼に開設するまでに至ることが出来ました。
ouiは、起業に多大な資金が必要となるパンや菓子製造の垣根を取り払い、小さく少しずつでも始められる取り組みをしている貴重な場です。
「小さくて大丈夫」、「やってみる」を叶えることで一歩踏み出せたときの自信と達成感は、震災で全てを失った私達には大きな一歩になります。
心から一人ひとりに寄り添い励まし合いながら力をつけていくことのできる貴重な機会を幾度となくいただいています。
復興は、一人ひとりのペースが違っていて、まだまだ歩き出せずにいる方もいます。今後もWEが人々、特に弱者である女性のエンパワーに寄与する灯台として温かな灯をともせるように切に願います。
そして私もまた、誰かの灯台になりたいと思いながら、今日もパンを焼いています。
(いずみぱん 水野いずみ)
パン菓子工房oui(ウィ)〜シェア工房のこと
2020/6/12 18:45
南三陸町にパン・菓子工房ouiをオープンしたのは2017年2月のこと。ウィのパンの製造販売と同時に、製造販売にチャレンジをしたい人・グループが、利用者として登録したうえ、時間決めで利用できる工房として運営しています。
このシェア工房プロジェクトは、この町に暮らす女性の「美味しいカンパーニュ*を食べたい」のひとことから始まりました。この町では当時、カンパーニュは買えませんでした。
ないなら自分でつくればよい、つくるなら上手につくりたい、いずれは販売もしてみたい。そんな思いで集まった女性たちとパンのスキルアップ教室を開催したのが2015年のことです。
多くの皆さんのご協力によって工房ができるまでのストーリーは、ぜひ、こちらを読んでください。(話したいエピソードは沢山ありますが、長くなりそうなので。もっと詳しく聞きたい人はぜひ声をかけてください。)
2017年2月に工房をオープンしてからこれまでに23名が工房に利用登録しています。パン・菓子・饅頭など、それぞれが得意なものをそれぞれの屋号で製造・販売しています。年数回イベント出店しているグループや、自分のお店を開く前に1、2回利用した人、1年以上通ってパンを焼き、今では自分の工房をもった人もいます。みんなそれぞれのペースで真剣にパンや菓子づくりに取り組んでいます。工房では、そんな利用者さんにスキルアップ教室の開催や、材料の量り売りなどで事業継続のサポートをしています。
私は、この工房で女性たちが輝く瞬間に何度も立ち会ってきました。やりたいことに向かっていく時の、喜びと期待と緊張混じりの表情は本当にキレイだなと思います。
ただ、一歩踏み出した先にはいろんな試練があります。特に、女性たちを見ていると自分の覚悟だけではどうにもならないこともあり、家族の理解と協力が欠かせません。そして、続けていくためには、お金ともうまくつきあっていかなくてはいけません。コトを起こすことは、大変なことが沢山ありますが、自分で決めることの繰り返しの中でしなやかな強さを身につけていくような気がしています。
自分のやりたいことが見つかった時、それをカタチにしていくためにチャレンジできる・実践の場があるかないかの差はとても大きいと思います。自分の暮らす地域にそのような場がない時の選択肢は、外にでるか、諦めるかになりがちですが、一人ではできないことも誰かとシェアすることや工夫次第で可能性が広がります。工房は、パンや菓子などの共同加工場として、一歩踏み出す人たちをこれからも応援していきたいと思っています。
(栗林美知子)
*カンパーニュ=田舎風フランスパン
パン・菓子工房oui (ウィ)〜工房スタッフの佐々木千尋さんを紹介します
2020/6/11 18:18
ウィメンズアイ は2017年2月、南三陸町にパン・菓子のシェア工房をオープンしました。ここでは週2回、ウィのパンも製造販売しています。ウィのパンは「うみさと暮らしのラボ」の約束にのっとり、この土地のめぐみを活かすこと、環境にやさしいこと、心とからだによいこと、の3つを大事にしています。
そのパンづくりを担っているのが佐々木千尋さんです。
1年半前、立ち上げ直後から携わってくれたスタッフが辞めることになり、常連のお客さんの紹介で出会ったのが千尋さんです。現在3人のお子さんを子育て中で、ご家族の全面的なご協力を得ながら、工房でパンを焼いてくれています。
仙台のパン屋さんで働いていた経験がある千尋さんはとても頼りになる存在です。地域の食材を使ったパンや菓子をあれこれ試作しながら、二人でウィらしい美味しい味を見つけていく作業は大変ですが、楽しい時間です。旬のモノの美味しいタイミングに合わせた仕込みは、地味で結構ハードな作業になることも多いのですが、千尋さんの丁寧な作業に助けられています。
生産者さんの顔が見える関係の中で食材を調達したり、工房の前で麦の栽培を始めたり、自分たちがこの土地で実践者となることで「うみさと暮らしのラボ」は本当の意味で、新たな価値をめぐらせることができるようになってきたように思います。毎週工房にパンを買いに来て下さるお客様もすこしずつ増えて、地域に広がっています。パンを通じて、規模は小さくても地域に元気をつくりだせているように感じています。
(栗林美知子)
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千尋さんからのひとこと
10年ほど前、長年働いたパン屋を退職し結婚して南三陸町にやってきました。
この町でもパン屋の仕事がしたいなと思っていましたが、震災が起き、たくさんのものがなくなり、やりたかったパンの事は後回しで、日常を取り戻す事と子育てに追われてあっという間に時間が過ぎていました。
下の子がちょうど1歳になるころ、パンを焼かないかと声をかけていただき、家族の協力を得ながら仕事を始めました。ブランクがあり、そのうえ「天然酵母」「100%国産小麦」で、というパン作りは経験不足だったので日々勉強でした。ウィさんに色々な情報をもらい、細かい作業など沢山フォロー、アドバイスしていただいたことでここまでやってこれたと思います。子どもと向き合う時間もいただきながら仕事をさせてもらい、いつも感謝しています。
工房では、栗林さんとたくさん意見をすり合わせて試作し、おいしいと思うパンを焼き上げています。そのパンをお客様が食べて「また食べたい!」と思ってくださることを目標に、パン作りに勤しんでいます。
ジャムもクリームも1から手作り、使う材料は全て安心で安全なもの、当たり前ですが焼き上がるものは、本当に無添加で身体にいいパンやお菓子なんです。
海のもの、山のもの、小麦、水、気候など、すべてを1から加工して1つのおいしいパンに焼き上げるのが私の仕事だと思っています。少しでも生産者さんのお役に立てるよう、そして食べてくださるお客様に喜んでいただけるよう、これからも努力していきたいと思います。
(佐々木千尋)