大阪マラソン2025・報告
2025/2/26 22:23
大阪マラソン2025チャリティーランナーへの支援ありがとうございました。お礼を兼ねて僕が大阪マラソンを走ることになった経緯と感想をハードボイルド私小説風に報告します。
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【邂逅】
2023年7月金曜の夜。仕事の不調を言い訳に呑むスコッチはまずい。氷が溶け薄くなったらなおさらだ。そろそろ帰ろうかと思ったときラウンジの扉が開いた。先輩と見知らぬ背の高い細身の男性が一緒に入ってきた。東京から研修講師としてやってきたという彼。先輩から紹介を受けて名刺交換をして研修会を欠席した非礼を詫びた。ウィスキーしかない店なのに彼は酒を飲まない。社交辞令の時間が終わろうとしたそのときお互いに腕時計に目をやる。「あれ鈴木さんはランナーですか?」「そういう金山さんもですよね?」。腕時計はロレックスとかグランドセイコーとか決して高級時計ではない。ランナー御用達のGPS付きガーミン。ラウンジは一気にマラソンラウンジに一変した。金山さんはサブ3ランナーという。この日を境に僕は彼の影響を受けて禁酒節酒の道を進む。
【始動】
この出会いがきっかけで緩やかな交流が始まった。東京マラソン2024後の食事、金山さんは那覇マラソンを走り僕は応援する、FBでそれぞれのボストンやシカゴでの完走を讃えあう。金山さんは同業者としてもランナーとしても先輩で背中は遠い。でも年齢が近いことや気さくな彼の人柄で僕は勝手に親近感を抱くようになった。そんな金山さんからある日、大阪マラソンのチャリーティーランナーの紹介を受けた。東京のチャリティーランナーは単に出走権を獲得するためだけの名ばかりだったから最初は懐疑的だった。でもよく聞くと海外レースにある寄付を募る形のファンドレイジング型。国内では唯一大阪だけ。しかも基準額7万円で何とかなりそう。関係者との交流会もあり、専用更衣室、トイレ、ラウンジがありレースに集中できる環境とのこと。金山さんが支援している育て上げネット(若者支援)の活動にも興味をもった。僕の大阪マラソン2025チャリティーランナーへの道が始まった。
【不安】
「若者支援」「若者」を考えていたら40後半の自分は「初老」だということを初めて知る。永遠の若手だと思っていたのにどうやら違うようだ。初老に僕に何ができるのか。若い者にも負けないようにどうせなら厳しい目標を設定しようと思うようになった。たしかにこの思考は初老だ。結局テーマは「若者の支援を・初老にサブ3:15」となった。半年で15分記録を短縮しなければならない。10月11月の走行距離も目標を下回る。果たして本当に達成できるのか。しかも年末から右ハムストリングスに軽い肉離れを発症。走っても足が抜ける感じで大阪への不安があった。眠りの質もしばらく悪い。仕事も薄氷の上。2月に入って丸亀ハーフで痛みが和らぎ何とかなる感じになったけども30km走をしていないなど年始の走りこみ不足は否めない。
【言霊】
不安を抱えながら10日前からカフェインを抜いて練習は無理をしない。いつもは弱気な僕も今回はコーチ、周囲、何より自分に言い聞かせる。目標はサブ3:15。前日にはストレッチを受けて開脚も10センチ広がった。当日の朝も、今年一番の目覚め。腹は決まった。この腹づもりを応援するように天気は予報以上に暖かくスタート前は日差しもさす。気温3度。絶好のランニング日和ではないか。いよいよ言い訳もできなくなった。寄付をしてくれた皆さん、沿道で待っている友人、ネット先で応援してくれているラン友、目標を宣言している以上、狙いに行くぞ。言霊だ。
【戦略】
1km4:40(ゴール予測3:16:55)を最低でもキープして後半勝負のネガティブスプリット(前半よりも後半を速く走ること)。目標ゴール3:14:59=1km4:38。ポジティブ脳で走る。常に前向きな思考で脳を疲れさせないこと。前夜も専門家のストレッチを受ける。補給は水分以外は全て自分で用意する。
10km:アミノ酸
20km:モルテン
30km:モルテン(カフェイン入り)
40km:モルテン(カフェイン入り)
予備1つ(エネルギー)
【出陣】
冬の青空と日差しに見守られ金山さんと大阪城内堀を散策しながら大阪府庁前のスタート地点へ。秀吉の命を受けて出陣する足軽兵のよう。34,000人。武器はシューズと風除けのカッパだけ。平和な時代だ。セレモニーで久しぶりに聞くコブクロの応援ソングも心地良い。周囲はアジア人が多い。欧米人の多い東京との違いを感じる。全体の1割ほどの前の列にいるので混雑もない。深呼吸、一瞬瞑想をしていざ出陣。1分前にコンビニ透明カッパを脱ぎ捨てる。気分はガウンを脱ぐアントニオ猪木だ。スズキボンバイエがスタート。すぐになだらか下り。道も広くなり走りやすい。青空が徐々に曇り空に変わる。風が吹くと痛い。
【好調】
順調な出陣。あまりに調子が良いので4:30を切りながら5km通過。はやる気持ちを「抑えて抑えて」と自分に言い聞かせる。天神橋、北浜、淀屋橋を抜ける。受験会場を思い出しつつ市役所前を過ぎる。大阪の近代建築を感じる。この界隈は好きだ。川沿い育て上げネットの応援を受けてそこから一気に御堂筋を南下する。道頓堀に目もくれず難波を右折。大正橋越しに大阪ドームを見る。最初の10kmでジェルを補給。橋を超えてお時さん、石本くんを見つけてハイタッチ。内心で「絶好調!」と宣言。脚の痛みや疲労は一切無い。想定よりも15kmを2分速く通過。常に応援してくれている友人やラン友の顔を思い浮かべる。しかし18km辺りで少し体が重くなってくる。タイムも1km4:40に後退する。意識的に抑えた訳ではなく体の反応。これは少し黄色信号。危ないので予定よりも早めに1回目のモルテンジェルを注入する。早めに音楽を聴き始める。イノキボンバイエが僕の全身に流れる。意識的に歩道側を走って声援を受けることを意識する。こちらもできるだけ感謝を言葉にする。
【異変】
ハーフを超えてなにわ筋を5kmほど南下する。粉雪が舞い始めた。体も冷えてきてまた辛さが出てきた。それでも折り返し戻ってきたトップランナーの動きに感動をしつつサブ3ランナーの金山さんと川津さんを探して声をかける。この作業に集中することで辛さも少し忘れる。千日前通りを西から東へ。高架下で影になったこともあって寒くて脳が止まり始めるのを感じる。山での遭難に近い。一瞬体が左にぐらり。一番の危機。まずい。4:45に後退。作戦よりも早めに28km地点でカフェイン入りのモルテンを注入。徐々に覚醒し始めて不思議と脚が動く始める。レース前に読んだ月刊誌「脳で30kmを超えろ」の言葉を言い聞かせる。ここで沿道にいるお時さんと石本くんに初めて弱音をはく。2人が止まって見える。さらに32キロの坂で前に進まない。大会唯一の坂。これが噂の上本町から難波への下り坂。ボーリングの球が転がっていくほどの傾斜。一番きつかった。4:55に後退。目の前のランナーが歩き出す。横にいたランナーも落ちてくる。「脳で越えろ」。歩くランナーに「歩くなー!」と声をかけ、横のランナーにも「登るぞー!」と声をかける。そうすることで自分を叱咤する。腕振りを大きくする。不思議と体が動く。32kmの「まいどエイド(大阪物産展)」もスルーして走りに集中する。
【躍動】
ここから下り坂でカフェインが効いてきたのか脚が動き始める。さらに早めに35kmでもう一度カフェインを入れる。これで全ての補給食がなくなった。弾が尽きた。あとは自分の体だけ。まさに足軽だ。ここからは沿道の声も聞こえなくなる。いつもなら愚痴や後悔ばかりの地点だが今回はそんなことは一切なかった。ただただゴールを目指す。沿道の友人の声も聞こえず見向きもせず一気呵成にゴールへ向かう。いざ大阪城!スタートのときは豊臣方だったのに今はもう徳川方に寝返ったような勢いだ。靴と足と脳と股関節が一体になって躍動する。
一気にゴール!これまでで一番興奮したゴールだった。体の疲れも心地よい。ニタニタが止まらない。更衣室では先にゴールした金山さんや育て上げネットのスタッフと喜びを分かち合う。陸前高田から来た若者にも出会った。続々と他のランナーも集まってくる。そこには笑顔しかない。これからにつながる交流がたくさんあった。
【始末】
ホテルに帰ってもニタニタが止まらない。それでも後で動画を見ると走り方が全然だめ。膝が伸びていない。股関節で走っていない。太ももで走っている。それはまさに百姓足軽の走り。決して武士、アスリートの走りではない。まだまだ道は険しい。
走ることで声援をもらい、走ることが誰かの支援になる。走っている時は常に誰かの顔を思い浮かべていた。京都で生まれ育った僕にとって大阪はちょっと遠くてちょっと怖い街だった。47都道府県一つにすぎなかった大阪がとても近くに感じるようになった。特にこのチャリテー制度が良い。偶然必然の出会いもあってまたしても走ることで世界が広がった。来年もまたこの制度で大阪を走り抜けたい。多くの友人にも参加してほしいと思った。おおきに大阪。今日もニタニタが止まらない。今週末あの店へ久々にスコッチを飲みに行こう。
【番外】
chat GPTの判定
今回の記録を確認すると:
• ハーフ地点(21.1km)までの推定タイム: 約 1時間37分30秒
• ハーフ以降(21.1km〜フィニッシュ)のタイム: 約 1時間37分10秒
• ハーフ以降のタイム(1時間37分10秒)が前半(1時間37分30秒)よりも短い
• わずか20秒の差ではあるが、後半の方が速く走れている
したがって、これは 「ほぼ完璧なネガティブスプリット」 と言って良いでしょう!
特にフルマラソンでは、後半でペースが落ちるのが一般的なので、これは非常に理想的なペース配分と言えます。
以上