「創造性溢れる映画作家を育てる」映画祭!第23回国際映画祭「東京フィルメックス」を例年通りの日数で開催するためのクラウドファンディングに挑戦します!

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認定NPO法人 東京フィルメックス

東京フィルメックス

支援総額

3,065,037円

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プログラム・ディレクターがコンペ全作品を徹底解説!(3)

2022/10/13 08:44

第23回東京フィルメックスは10/29(土)~11/5(土)の8日間に18作品を上映予定です。 ラインナップ会見では上映作品の見どころをプログラミング・ディレクターの神谷直希が徹底解説!昨日に引き続き、映画の未来を担う俊英が集まるコンペティション部門のご紹介。コンペの第3弾です。

■コンペティション部門(3)

「同じ下着を着るふたりの女」(キム・セイム監督)※画像は本投稿のサムネイル参照

昨年の釜山国際映画祭でニューカレンツ賞を受賞した作品です。釜山映画祭でプレミア映される韓国映画は、同じ年のフィルメックスの選考の際には見られなかったり、間に合わなかったりすることが多く、この作品も残念ながら昨年の選考時には見られませんでした。しかし、本当に素晴らしいレベルのデビュー作なので、一周遅れではありますが、今回のコンペティション部門に招待させていただきました。

狭いアパートで同居している中年のシングルマザーと20代の娘の関係を描いた作品です。この母親がかなり暴力的で強烈な人なのですが、それにもかかわらず、2人は互いにどこか依存しあっている。そうした暴力と依存の悪循環に陥った親子の心のひだに深く入り込んでいく作品で、本当に見事な長編デビュー作です。たぶん見た後で誰かとこの映画について話さないわけにはいかなくなる、そんな強烈な 1 本だと思います。

「Next Sohee(英題)」(チョン・ジュリ監督)

2014年のフィルメックスで上映した「私の少女」に続くチョン・ジュリ監督の待望の新作で、カンヌ映画祭批評家週間のクロージング作品としてプレミア上映されました。前作に続いて、ペ・ドゥナさんが出演しています。

ソヒという名前の高校生が学校からの紹介でコールセンターに職を得るのですが、過酷な労働環境によって次第に追い込まれていき、ついには自殺に至ってしまう。そこまでが映画の前半部分です。後半はこの事件を捜査する刑事を主人公に、彼女を死に追い込んでいった搾取の構造的要因が次第に明らかになっていくという構成になっています。刑事を演じるのがペ・ドゥナさんで、彼女も本当にいいのですが、ソヒ役のキム・シウンさんも素晴らしい。チョン・ジュリ監督はあまり派手な演出はしない人ですが、一歩引いたようなところから役者たちの最高の演技を引き出す粘り強い演出が本作でも発揮されています。

「遠いところ」(工藤将亮監督)

「アイムクレイジー」(2019年)でデビューした工藤将亮監督の長編第3作。7月のカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭のメインコンペティション部門でワールドプレミア上映されました。

 

主人公は、沖縄のコザで暮らす10代の若い母親。キャバクラで働きながら、幼い息子と夫との生活を彼女がギリギリで支えています。夫はまともに働く気がほとんどない男で、夫の暴力によって彼女はキャバクラで働くのも難しくなり、現実的な選択肢がどんどん失われて、負のスパイラルにずるずると陥っていくという物語です。沖縄は貧困問題が本土と比べて非常に深刻で、とりわけ子供の貧困は大きな社会問題になっているとのことですが、この若い母親の姿を通して沖縄の現実や社会のあり方が立体的に見えて来ます。といっても、ドキュメンタリータッチの作品ではなく、カメラを置く位置や構図も含め、事前に入念な準備を重ねた上で撮ったことがうかがえ、エンターテインメントと呼ぶと少し語弊があるかもしれませんが、非常に巧みに構築された見ごたえのあるドラマになっています。

鑑賞のご参考にご一読下さい。

一般チケットの販売は10/16(日)午前10時から予定しています。上映情報などは

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をご覧ください。(続く)

(文・深津純子)


本キャンペーンを応援してくださり、ありがとうございます!

支援者数が190名様を突破し、達成率も72%まで伸びてきました!

全体の四分の3も近づいてきました!

あと1週間、引き続きの応援のほど、何卒よろしくお願いいたします!

※、先ほど人数を誤って少なく投稿してしまいましたので、訂正版です。

事務局・金谷重朗



第23回東京フィルメックスは10/29(土)~11/5(土)の8日間に18作品を上映予定です。
ラインナップ会見では上映作品の見どころをプログラミング・ディレクターの神谷直希が徹底解説!昨日に引き続き、映画の未来を担う俊英が集まるコンペティション部門のご紹介。コンペの第2弾です。

 ■コンペティション部門(2)

「自叙伝」(マクバル・ムバラク監督) ※この投稿のサムネイル画像

インドネシア出身のマクバル・ムバラク監督の長編デビュー作で、9月のヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で上映され、同部門と批評家週間を併せたカテゴリーの国際映画批評家連盟賞を受賞しました。本作のプロデューサーのユリア・エヴィナ・バラさんは2020年のタレンツ・トーキョーの修了生で、彼女が作品を持ってまた映画祭に戻ってきてくれることを私たちもとても嬉しく思っています。

インドネシアのわりと近い過去、おそらく1990年代頃の軍事独裁体制下の社会が舞台になった作品です。引退後もなお大きな影響力を持っている元将軍と、その邸宅を管理している青年が疑似親子的な関係を築いていく過程を追っています。この青年は、実の父親が刑務所に入っているため不在なのですが、父親代わりの元将軍の寵愛あるいは承認を得ようとして、少々危険な道に足を踏み入れて行きます。そんな青年の目を通して、暴力と欺瞞にまみれた軍事独裁体制の社会のあり方が見えてくる。長編デビュー作ながら懐が深いというか、射程の広い作品です。

「アーノルドは模範生」(ソラヨス・プラパパン監督)

タイのソラヨス・プラパパン監督の長編デビュー作。今年8月のロカルノ映画祭の新進監督コンペティション部門でワールドプレミアされました。実はこの監督もタレンツ・トーキョーの修了生です。参加していただいたのが2015年なので、映画の完成までに時間はかかりましたが、初長編作品とともにフィルメックスに戻って来てくれるのをたいへん嬉しく思っています。

主人公のアーノルドは、数学オリンピックでメダルを取るくらいすごく頭のいい高校生です。彼が大学入学試験に関わる不正ビジネスに関与する過程が描かれるのですが、それと並行する形で、彼の学校の生徒たちが、学校側の抑圧的な教育体制に対して組織的な抗議運動を開始する姿も描かれます。タイで2020年に実際に起きた 「バッド・スチューデント運動」という大きな抗議運動を受けて急遽脚本に取り込んだ作品とのことで、抑圧的な教育体制があり、その背後には当然ながら抑圧的な国家体制があり、それに対する抗議運動の中で模範生と呼ばれる生徒が不正ビジネスに関与していく――そうしたいくつものベクトルを持っている。コメディタッチの描写も多いのですが、根底には確かな怒りも感じられ、その微妙な舵取りも非常に興味深い作品です。

「石門(せきもん)」(ホワン・ジー&大塚竜治共同監督)。

ヴェネチア国際映画祭ベニスデイズ部門でワールドプレミア上映された中国人と日本人の夫婦監督の最新作。2人の作品は「卵と石」(2012年)が大阪アジアン映画祭、「フーリッシュ・バード」(2017年)がアジア・フォーカス福岡映画祭で上映されていますが、フィルメックスでご紹介するのは今回が初めてになります。本作はクレジットの製作国は「日本」となっていますが、全編が中国で撮影され、実質的には中国映画と思っていただいていいかもしれません。

前2作品で地方暮らしの少女を演じたヤオ・ホングイさんが再びリンという名の女性を演じています。彼女は都会に出て来て、フライトアテンダントの学校に通いながら、先のない単発の仕事を次々こなしています。しかし、これからさらに英語の勉強をして頑張ろうという時に妊娠していることがわかり、対応を迫られるという物語です。両監督の過去作品と同様に、今回もひとりの女性の姿を通して現代の中国社会の現実がその暗部も含めて重層的に見えて来ます。カメラは基本的に観察的な視点に徹しているのですが、決して目を逸らすことはしないという強固な意思が感じられ、ある意味でとても容赦のない作品でもあると思います。 


鑑賞のご参考にご一読下さい。チケットは10/16(日)発売です!(続く)

(文・深津純子)


第23回東京フィルメックスは10/29(土)~11/5(土)の8日間に18作品を上映予定です。ラインナップ会見では上映作品の見どころをプログラミング・ディレクターの神谷直希が徹底解説!
まずは映画の未来を担う俊英が集まるコンペティション部門の9作品をご紹介します。鑑賞のご参考にご一読下さい。チケットは10/16(日)発売です!

 
■コンペティション部門

「地中海熱」(マハ・ハジ監督)※この投稿のトップ画面

パレスチナの女性監督マハ・ハジの長編第2作です。今年のカンヌ映画祭ある視点部門で上映され脚本賞を受賞しました。監督は長編第1作のPERSONAL AFFAIRSも同部門で上映されていて、デビュー以来2作続けてカンヌに選ばれた監督ということになります。

イスラエルのハイファを舞台に、うつ病に苦しんでいる作家志望の中年男が隣の部屋に越してきた対照的な性格の中年男性と奇妙な友情関係を築いていく物語です。この監督の第 1 作と同様にイスラエル占領下に置かれたパレスチナ人のアイデンティティの問題がかなり重要な背景になっています。コメディ的な要素も結構入っている作品なのですが、それがだんだんダークな色彩を強めていく。そのあたりの微妙なラインの舵取りも見事な作品です。

「ダム」(アリ・チェリ監督)

カンヌ映画祭の監督週間でプレミア上映されたレバノン出身のアリ・チェリ監督の長編映画監督デビュー作です。監督はビジュアルアーティストとして既に実績がある方で、ヴェネチア・ビエンナーレに出展歴があったり、ロンドン・ナショナル・ギャラリーのアーティスト・イン・レジデンスに選ばれたりもしているとのことです。彫刻などのほか、ビデオインスタレーション的な映像作品も発表しています。映画監督としてはこれまでに2本の短編作品があり、本作が長編デビュー作になります。


舞台はスーダン。ナイル川流域にあるメロウェダムという巨大な水力発電用ダムの近くでレンガ職人として働いている男が主人公です。男は昼間はふつうにレンガ職人として働いているのですが、夜になると砂漠の中に入り込み、人里離れたところで泥でできた奇妙な建造物をひとりで作っていて、その大きな建造物がいつしか生命のようなものを持ち始めます。2019年頃という設定なのですが、当時は30年近く独裁体制を敷いてきたオマル・アル=バシール大統領に対する国民の抗議運動が盛んになっていました。そうした政情不安と呼応するような形で、主人公が奇妙な建造物を通してその土地の神話的な存在に触れていく物語になっています。ビジュアル的にもすごく力のある作品です。

「ソウルに帰る」(ダヴィ・シュー監督)

これもカンヌのある視点部門でプレミア上映された作品で、カンボジア系フランス人監督ダヴィ・シューが韓国を舞台に撮った新作です。ドキュメンタリーを含めると、彼の 3 本目の長編作品になります。監督はプロデューサーとしても活躍していて、昨年の東京フィルメックスで上映した「ホワイト・ビルディング」(ニアン・カヴィッチ監督)も彼のプロデュース作品でした。


主人公は、韓国で生まれ、フランスで養父母に育てられた20代の女性。彼女が生まれ故郷の韓国に初めて戻るところから物語は始まります。先の読めない展開の作品なので、あまり内容は言うべきではないと思うのですが、その後の約8年に及ぶ彼女の軌跡を追っています。キャラクターの造形や撮影・編集・音楽を含めて全てが懐の深い、とても水準の高い作品で、今年のアジア映画を代表する一本と言っていいと思います。(つづく)

(文・深津純子)


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